東京大学
WINGS-PES

新領域創成科学研究科（以下、新領域）が掲げる教育・人材育成の場と仕組みとして「学融合教育研究コモンズ」というものがあります。この「コモンズ」という言葉は、もともと経済の分野で使われた言葉で「共同資源、共有財産」を意味する言葉ですが、新領域も同様に、様々な分野の専門家が、多様な研究教育ファシリティを共有できる環境にあります。「学融合教育研究コモンズ」は、研究活動を通じて蓄積してきた研究ノウハウ・技術・方法を、異分野の研究と共有し、活かすことで、学融合研究を促進させ、研究開発力に卓越した「知のプロフェッショナル」を創出する学融合教育の場と仕組みとして整備されています。

従来の「コモンズ」という言葉には、限られた資源を共同利用するためのルールや枯渇への懸念がついてまわりましたが、新領域が標榜する「学融合教育研究コモンズ」あるいは「知のコモンズ」は、枯渇するどころか、共有することによって新しいものが生まれる可能性があります。「知のコモンズ」を土台として、学融合教育の場と仕組みを学生や教員の力で育てていこうとしています。この理念は、新領域創成科学研究科が掲げるものではありますが、卓越大学院プログラムWINGS-PESの教育理念にも色濃く反映されています。WINGS-PESは、大規模・複雑システムのデータ解析と予測技術を、地球社会の多義的な問題を俯瞰的に分析するサステイナビリティ学と融合させることにより、未来の課題を先取りし国際社会の進むべき方向をプロアクティブに提示する「環境知のプロフェッショナル」を育成します。このプログラムの修了生が研究者として恐れを知らない尖った人材として社会に羽ばたいてくれると強く期待しています。

WINGS-PESは、修士課程入学時点で既に博士進学を目指している学生を対象としたプログラムですが、 多くの学生は、博士まで進学するかどうか、悩むことと思います。WINGS-PESでは受講生に対し、経済的な支援を行うと同時に、高い志を持った同じ境遇の学生との交流の場を提供しています。博士課程で研究に行き詰まった時、受講生は精神的に支えとなってくれる仲間や環境、さらにはもっと大きなものを得られることでしょう。

メッセージはこちらから動画でもご覧いただけます。

これだけ多彩な分野の専門家が一つの施設、一つの空間の中に会している研究科は新領域創成科学研究科の他に無いのではないでしょうか。その新領域創成科学研究科ならではの特色を活かした修士課程～博士課程の5年一貫のプログラムをどのように創っていくのかを議論し、現在の「プロアクティブ環境学」というテーマを持つ「国際卓越大学院」の設置に至りました。

従来、問題に取り組む姿勢は、なにか問題が起きてからそれに対応する、「リアクティブ」が主流でした。これに対し、将来を予測して問題を先取りしていく。これが「プロアクティブ」なスタイルです。問題にアクティブに対応していくこと、「プロアクティブ環境学」にはそのような意味が込められています。皆さんには、多彩な分野、様々な研究方法・分析方法を参考にしながら、自たちの未来を予測していく新しい研究手法を編み出してもらいたいと思っています。各分野の人材や技術の組合せ方によって、出来上がってくるものは多種多様です。ゆえに、私たちは他の分野のことを知らなくてはいけませんし、他の分野を上手く育てていかなくてはいけません。あるいは、自分の研究分野と上手に組合せられるように、誘導していかなくてはならないこともあります。自分の専門とは離れた分野との「コーディネート力」のような素養がこれからの研究者には必要です。新領域創成科学研究科では、教員・職員問わず、他の分野の専門家と日常的に交流があります。そのような交流の中で研究者的なセンスが磨かれていくことを、期待しています。

世の中は問題で溢れています。ある問題を解決すると、次の問題が発生してくる。問題は見方によっても変わってきます。すると、解き方も変わります。問題の解き方に正解はありません。正攻法はないのです。だから、問題の解き方こそ一番の問題であり、そこを本プログラムの参加者には一番考えてほしいと思っています。社会は問題に満ち溢れていますが、問題を解く鍵や方法は皆さんに委ねられています。ぜひ、世の中を変えるような、問題作となるような研究をしていただきたいと思います。

メッセージはこちらから動画でもご覧いただけます。